オーストリアとドイツには深い関係がありますが、現在はどのようになっているのか。日本の特徴とも比べて学習してみましょう。
ドイツ民族とオーストリア人
- 日本語を母語として使うのは日本人だけ
- ドイツとドイツ語圏
- 現在のオーストリア
日本語を母語として使うのは日本人だけ
日本人は単一民族国家ではありませんが、世界でもまれに見るほど均質性の高い国民です。国中どこへ行っても標準の日本語が通用し、異民族問題というのもほとんどありません。
よほどの達人は別として「外国人が使う日本語」というのも子供にも聞き分けられてしまいますが(地方の日本人の訛りとはまた別のものとして)これも海外には見られない現象です。
また、ほぼすべての日本人が日本語を母語使用するだけでなく、逆に国外で母語使用する人はほとんどいません。これも人口1億規模の大国としては異例中の異例です。
ドイツとドイツ語圏
日本と比較的人口規模や面積が似ていて、なおかつ同一言語圏が数ヶ国語にまたがっている国にドイツがあります。
ドイツ語圏というのは、英語やフランス語とは違って、ほとんどがドイツの隣国です。常識的に考えて、同一もしくは近似の民族が歴史的経緯から別国家に属していると考えるのが普通でしょう。
代表的なのがオーストリアで、ここはそもそもドイツが「ドイツ人の神聖ローマ帝国」という名称だった中世から近世にかけて、ずっと皇帝を輩出していた国です。いわばドイツの首都地域だったわけです。
その後も半世紀ほどドイツ連邦議長国をつとめましたが、実質は多数国家連合体だったドイツをビスマルクが近代的な中央集権国家として統一するときに、排除されてしまいました。
理由のひとつとして東欧のほとんど(つまり広大な非ドイツ人地域)を領有していたために、統一ドイツにふさわしくないと判断されたといわれます。
その後第1次世界大戦を経てそれら東欧地域は全て独立し、ドイツ人のみの小国となったオーストリアは国歌の歌詞に、「われらドイツ人の国オーストリア」と謳うなど、再編入を熱望。
それは、オーストリア人でありながらドイツの総統に就いたヒトラーの手でかなえられましたが、悲惨な戦火と弾圧にも巻き込まれることにもなり、戦後のオーストリア人は「ドイツ人の国」とは呼ばなくなりました。
現在のオーストリア
ウィーンのタクシーで「あなたがたドイツ人(ドイッチェ)は」と呼びかけ「俺はドイツ人じゃない、オーストリア人だ!」と怒鳴られたという逸話が紹介されたことがあります。
現在の実情は、知人のオーストリア人に尋ねてみました。「それは、相手による」といいます。
今でも、われらひとつのドイツ、という考え方をする人は少なくない。
ただ、基本的には右翼勢力が東欧(ハンガリー、チェコ、旧ユーゴ)系オーストリア人を差別する際に、対立概念としてドイツ民族を持ち出すケースも多く、その意味でドイツ人という言葉を不快に感じる人もいるのは事実。
ゆきずりのオーストリア人を「ドイツ人」と呼ぶのは避けたほうがいいといいます。
ちなみに、ヒトラーがオーストリア人であるという話題もタブーに近いそうです。